「終わり」がくれた、もう一度の「始まり」──ヒロアカ原画展2025、東京から大阪へ

『僕のヒーローアカデミア』の連載が、ついに終わる。

あの戦いの余韻がまだ胸に残っているというのに、次のページはもう開かれていた。

──2025年、東京・京橋にて開幕する〈ヒロアカ原画展〉は、単なる記念展ではない。

それは、10年にわたって描かれた「ヒーローとは何か」という問いへの、ひとつの答えであり、ファンひとりひとりが“自分の物語”として背負ってきた時間との再会でもある。

本稿では、2025年開催の『ヒロアカ原画展』について、開催情報から展示内容、特典・グッズまで、その全貌を静かに深く綴っていく。

■ 「ヒロアカ原画展2025」開催情報──その日、東京が“ヒーローの記憶”になる

2025年6月21日から8月31日まで、東京・京橋のCREATIVE MUSEUM TOKYOにて『僕のヒーローアカデミア原画展』が開催される。

• 会期：2025年6月21日（土）〜8月31日（日） ※会期中無休
• 会場：CREATIVE MUSEUM TOKYO（東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 6F）
• 開館時間：10:00〜20:00（最終入場 19:30）
• アクセス：JR「東京駅」徒歩7分／東京メトロ「京橋駅」徒歩3分
• 大阪巡回展：2025年秋開催予定

この展覧会は、連載完結を迎えたヒロアカの足跡をたどる、記念すべき「一冊のアルバム」だ。いや、「アルバム」では足りないかもしれない。あれは、僕らの心に焼き付いた“生き様”そのものだった。

展示会場は、JR東京駅から歩いて7分。都会のざわめきのなかに静かに佇むミュージアムは、まるで、戦いのあとに訪れる安堵の場所のようでもある。

ここには堀越耕平先生による直筆原稿、制作資料、描き下ろしのキービジュアルが並び、あの世界を作っていた「線」と「色」と「魂」が目の前に立ち上がる。

そして、もう一つ忘れてはならないのが、等身大の“黒デク”フィギュア──かつての無垢な緑谷出久が、どれほどの葛藤を抱えてこの姿にたどり着いたか。それを知る者にとって、この展示は、まるで“過去の自分”との対話のように映るだろう。

秋には大阪巡回展も予定されている。関西圏の読者諸氏には、ぜひ“ヒーローの残響”をその目で確かめてほしい。

■ すべてが「指定席」──チケット購入の心得

この原画展、少しだけ“緊張感”がある。

なぜなら、すべてが「全日日時指定制」だからだ。

──行くと決めたなら、覚悟を持って、その時間を自分の手で選び取る必要がある。

チケットはイープラス、またはファミリーマート店頭のマルチコピー機での販売となる。会場での当日券はなく、“ふらりと寄る”という偶然は、今回ばかりは許されない。

料金は以下の通り。

※当日券の販売はありません。必ず事前にご予約を。（すべての来場者は、「全日日時指定制」でチケットを購入する必要があります。）

注目すべきは、数量限定の「グッズ付きチケット」。

描き下ろしキービジュアルを使用したホロ加工のコレクションカードセットが付属し、その輝きはまるで、誰かの“過去を肯定する”ような優しさを湛えている。

きっとこれは、ただの観覧券ではない。

──自分が「観に行くことを選んだ」という、その意志ごと抱きしめてくれる一枚なのだ。

■ 原画と原点──展示のなかの『僕のヒーローアカデミア』

展示という形式には、時に残酷なまでの真実が宿る。

──「完成品」ではなく、「途中経過」がそこにはある。

今回の〈ヒロアカ原画展〉で展示されるのは、堀越耕平先生による直筆原稿の数々だ。

インクのかすれ、鉛筆の迷い、ホワイトの修正。アニメでは見ることのできない「作家の呼吸」が、ここには残っている。

たとえば、あの“オールマイト引退”のページ。

一見して強く、崇高で、絶望的な場面だったあの一コマも、実際の原稿ではどこか震えている。線が迷い、余白が叫び、枠の外から「人間」が滲み出している。

そして、展示の目玉のひとつ──等身大“黒デク”フィギュア。

闇に染まりながらも、誰かを守ろうとした少年の、歪で痛ましくも美しい姿が、そこに立っている。

この展示が伝えようとしているのは、「かっこよさ」ではない。

むしろ、ヒーローになるとはどういうことか──その苦悩と代償に、静かに光をあてている。

だからこそ、胸に来る。

僕らがヒロアカに熱を上げたのは、超常能力ではなく、日常を引きずったまま立ち上がる誰かの背中に、どうしようもなく心を預けていたからだ。

■ 触れられる記憶──特典とグッズの存在理由

会場をあとにしても、手元には何かが残る。

──それは、思い出ではなく「記憶のしおり」だ。

今回の〈ヒロアカ原画展〉では、来場者特典として「タブロイド風ステッカー（全5種）」がランダムで配布される。

それぞれに、作中の名場面が刻まれているという。たとえば、あの爆豪の涙。あの死柄木の絶望。あの緑谷の決意。

何が当たるかはわからない──だが、それがいい。

選べないということは、きっと「その時の自分に必要なひとコマ」が、ふと手元に届くことなのだ。

また、グッズ販売も充実している。

描き下ろしビジュアルを使用したアクリルスタンド、クリアファイル、Tシャツ、そして例のホロ加工コレクションカードセットなど、どれもがファン心理をくすぐる完成度だ。

それらを手に取るたびに、私たちは“あの時間”に帰ってゆく。

──ただのモノではない。

それは、あのページを閉じた日の喪失を、少しだけ慰めてくれる「形のある証」なのだ。

■ ヒロアカという時代の証言──「ありがとう」では足りないから

10年にわたる連載のなかで、『僕のヒーローアカデミア』は何度も“社会”と向き合ってきた。

正しさと暴力、個性と孤独、救済と責任。──それは、まさしく現代そのものだった。

そして私たち読者もまた、成長していた。

ページをめくる指が、いつの間にか老けていた。ふと気づけば、守られる側ではなく、誰かを守る立場になっていた。

この〈原画展2025〉は、単なる「作品の総括」ではない。

それは、あの時代を、あの熱を、あの心の揺れを、生きた証を見つけに行く旅だ。

私たちは、アニメと共に老いてきた。

それでも、ページの中の彼らは、いつまでも“あの瞬間”に生きている。

だから、もう一度会いに行こう。言葉ではなく、「歩み」で応えよう。

──ありがとう、では足りない。

せめてこの展示を通して、自分なりの「答え」を胸に刻めたら、と思う。